さて。
と思ったら、いきなりドアが開きました。鍵なんて何の役にも立っていません!
ドア付近にいた私はたぶんぎょっとした顔をしていたと思います。入ってきたのは食堂の制服を着たおばちゃんでした。優しいかんじのおばちゃんです。
「あんた出るの?」
と言って道を譲ってくれました。取り乱している私は「わ、私まだなの」と視線をさまよわせました。
「ん、じゃ入りなよ」
おばちゃんは私を促して自分も便器にまたがりました。
たま子、人生最大のピンチです。
まだと言ってしまった手前、出て行くのは変です。でもこの状態でおばちゃんと並んで用を足すんですか?それでいいんでしょうか?しかも便器の向かい側の壁、手を洗うところに大きな鏡がありますから、用を足すときちょうど並んでいる自分たちの姿を見つめるようなかっこうになってしまいます。
本当に、マジで、人生最大のピンチ!
いや、ダメだ。こんなところで問題から目をそらせてはいけない。立ち向かえ、たま子!ここは中国だ、大人になるんだ!キャリアアップのチャンス到来だ!やっほー!
最後のほうはかなり錯乱気味でした。
私は下ばかり見ながらこの危機を何とか乗り越えました。
それにしても鏡越しにおばちゃんの視線を感じまくったんですけど、気のせいでしょうか?顔を上げて確かめる勇気まではさすがにありませんでした。
トイレから出た私は小走りでだんなさんのところへ逃げ帰りました。